ここからは電離度のお話を説明していきます。電離度は軽く見られがちですが、これこそが本当に大事なものです。酢酸の加水分解に戻りますか?だって、強酸や弱酸などの違いもこの電離度の違いによって定義されてますし、化学Uでやるような酸・塩基の電離平衡などもこの電離度が関わってきます。
教科書によって強塩基と書いてあったり、強塩基からはずしてあったりするCa(OH)2なども、電離度の定義によって強塩基というカテゴリーに分類されます。ではなぜ強塩基にCa(OH)2を入れてあげない教科書などがあるのでしょう?何故かわかりますか?
そういう疑問をちゃんと理解するために、この電離度をしっかりと理解しましょう。
皆さんはちゃんと電離度の定義が言えるでしょうか?電離度とは
電離度
と定義されています。つまりこのイメージがとても大事です。しっかりと覚えてください。溶けた電解質のうち、どれだけが電離したのか?という量です。
したがって の値は となります。 が1は溶けた電解質すべてが電離したということを表し、 が0は溶けた電解質が全く電離しないことを表しています。
酸でも塩基でも電離度 がほぼ1であるものを強酸や強塩基と定義しています。つまり溶けているもののほとんどが電離するため、酸の場合多量の を、塩基の場合は多量の を出します。
強酸を例にとって考えてみましょう。表9に示すように、塩酸 mol/ が溶けるとほぼ100% が電離100%電離している状態を当然電離度α=1と表します。して、 を mol/ 生成します。したがって、pH=1を示します。強酸性ですね。
次に弱酸を考えてみましょう。酢酸の電離度を とします。つまり、溶けた酢酸のうち、電離しているのは全体の1% というわけです。ではその量的関係を示しましょう。
表10を見てもわかるように、表9の今回はわかりやすいように、あえて塩酸と酢酸の最初のモル濃度をそろえました。塩酸と同様のモル濃度の酢酸であるにも関わらず、電離後の溶液中の のモル濃度は塩酸の 倍となっています。つまり、pHが3なのです。
電離度が小さい電解質(弱電解質)の場合、色々と困った現象を引き起こします。加水分解や緩衝作用がそうです。
ここで加水分解のお話に進む前に、ちょっと小話でもしておきましょう。私の高校の先生が、電池の実験をしようとして強塩基である の水溶液を用意して金属板を差し入れました。いざ実験してみると…電流が流れません。「あれ?おかしいなぁ?強塩基は強電解質だから電流が流れるはずなのに…。」
たしかに は強電解質の強塩基です。でも電離度の定義をちゃんと知っているとそのトリックが見えてきますよね?電離度の定義は、「溶けた物質のうちどれだけが電離したかを表す割合」です。つまり は溶けたものはほぼ電離しているんです。
だけど、溶けにくい物質なんですね。だからその水溶液中にそんなにイオンを生じなかったのがその実験失敗の原因でした。つまり、定義をおろそかにしていると、学校の先生であっても失敗するということです。
大学入試の問題は、問題演習をどれだけこなしたか?を問いたいわけではありません。どれだけ原理をしっかり理解しているか?を問いたいのです。そこをしっかりと意識しておくと、とても簡単に問題が解けるようになります。
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