希釈の罠に戻る小学生の理科のときから、散々「希釈する」というキーワードを聞いてきましたよね?だからきっと大丈夫だと思います。さぁ、 高校化学における希釈の概念をしっかりと原理的に理解していきましょう。
水で薄めることを希釈するといいます。つまり、ある水溶液に水を加えて濃度を小さくするわけです。
塩酸とは、塩化水素 HClを水に溶かした混合物のことです。では、今pH=1の塩酸1 の体積を10倍にしたとしましょう。もともとはpH=1ですから、塩酸の水素イオン濃度[ ]は [mol/ ]ですね。
つまり「塩酸1 中には水素イオン が mol存在している」わけです。 物質量(mol数)とモル濃度(mol/l)は全く別物です。物質量は個数ですが、 モル濃度は1Lあたりに溶質が何molあるかを表す割合です。では、その水溶液の体積を10 にすると、水素イオンの濃度はどうなるでしょうか?もちろん
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となります。
水で10倍に薄めたせいで、「塩酸1 中に存在する水素イオン は molになった」わけです。
ところでこのとき のモル濃度[ ]はどうなっているのでしょうか?
水はもちろんこの水素イオン濃度[ ]を監視していたのです。もともとpH=1ということは
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であったわけですが、水素イオン濃度[ ]が [mol/ ]に小さくなったので、水酸化物イオン濃度[ ]を、水のイオン積を一定に保つため に変化させなくてはならないわけです。
そこで式(3)を保つために変化する[ ]を求めてみましょう。水素イオン濃度[ ]は [mol/ ]ですから
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したがって最初の溶液を10倍に希釈した水溶液の[ ]と[ ]は
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初めての時は本当に先に進んでください。となりました…が、ここで皆さんは何か疑問に思わなかったでしょうか? とりあえず最初の勉強段階で疑問に思わなかったらそれはそれでかまいません。 次に進みましょう。もし、より深く突っ込んだ、受験に対応できる知識が欲しい場合は希釈の罠にお進みください。
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