では皆さんが普段見慣れた線形な軸と対数軸の違いを図1で見てみましょう。
どうでしょう?違いがわかりますか?大きな違いは「目盛りの間隔」と「桁の上がり方」です。
上の線形軸は目盛りが等間隔ですが、下の対数軸はどんどん詰まって…また広がって詰まってを繰り返します。 また、上の線形軸は10の次の目盛りは11ですが、下の対数軸は10の次の目盛りが20になります。
ここで、対数軸においてもっと値を入れた図を図2に示します。
これでもう少しイメージを膨らませましょう。まず対数軸は「線形軸の0〜1の範囲を無限に拡大」します。 つまり、小さい値をはるかに大きく表示するということです。(しかし決して0になることはありません。 つまり対数軸では0は存在しないのです。)
1円のあたりの一目盛りの変化と1億円のあたりの一目盛りの変化は全然桁違いですよね。 また対数軸は「線形軸のとても大きな値をまるでほとんど変化していないか のように小さく圧縮」します。これは実は我々が日頃お金を勘定するときの考え方と同じですよね。100円の次は200円で …そのうち1000円になり、その次は2000円で…のような1円、10円、100円、1000円、1万円、10万円、100万円、1000万円、1億円 という考え方は対数軸の考え方です。
ではなぜ対数軸はこのような目盛りの取り方をするのでしょうか?それは、この目盛りの取り方にすることで片対数グラフ(2軸のうちどちらか一方が で表されているグラフのこと)上では のグラフが直線になるからです。ではもう少し詳しく見てみましょう。
まず の関数を線形軸を用いて図3に表してみましょう。 の値が0から100くらいまでの間に の値が急激に変化していますが、その変化はほぼ直線となって表されており、よくわかりません。また、 の値が大きくなると飽和してきます。
これでは、関数の持つ意味を把握する上で不十分です。そこで、 軸を対数軸にした片対数グラフで考えてみましょう。同じ のグラフを図4に表します。
軸の値の変化に注目してください。1の左は0.1、その次は0.01…と続きます。1の右は10、次は100…と続きます。
図4のグラフを見て気付くことと言えば、図3と違って、 直線になっていることでしょう。それは の性質によります。 (底が10の常用対数)は の値が10倍されるごとにその値が1つ増えます。それが直線になるように軸を調整したものが片対数グラフなのです。
このようにすることで、1から左に 倍されるごとに、 軸の値が1つずつ減少することが感覚的に理解できるでしょう。線形軸では表せなかったとても細かい の範囲に対応する の値が明確にイメージ化されます。
つまり、以上が酸・塩基の水素イオン濃度を表すときに が使われる理由なのです。
酸・塩基において、その指標として扱われるのが、モル濃度について知りたい場合はこのリンクでどうぞ。水素イオン濃度です(この場合の濃度はモル濃度[mol/ ]であり、溶液1 における水素イオンのモル数で表されます)。ただ、扱うこの水素イオンのモル濃度は値がとても小さいのです。この小さい値をそのまま線形軸で扱いたくない! (その変化がいまいちよくわからないから!)だから、小さい変化を大きく表せる対数表記を用いるのです。
しかしここで、賢明な皆さんは疑問に思いますよね。何故式(1)には「 (マイナス)」が付いているのだろうと。これは実は次のようなことなのです。
式(2)を見て下さい。pHというのは実は の常用対数を取っているんですね。つまり「[ ]の値はあまりに小さいので、そのままでは扱いにくいし、 をとってもマイナスの値になってしまう。ということは逆に、その水素イオン濃度の逆数 は大きい値となるはずで、この値の常用対数をとったものを利用して酸や塩基の度合いを表そう!」ということです。表1に と の違いを示します。
Copyright (C) F_Master All rights reserved. 更新 Monday, 21.05.2012 10:50 pm
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