前のページで考えた仕事という概念を物理に置き換えて考えてみます。難しい話ではないですから、リラックスして読んでみてください。
さきほどと同じ話を考えてみましょう。
図9の男の子は、ただ物体を押しているだけです。力が作用していることを示すランプが光っていますね。ただ、これだけでは「力が作用した結果何が起こったのか?」が説明できません。では図10だと説明できるでしょうか?
図10は男の子が[N]の力で物体を押していることが示されています。(このとき物体の鉛直方向にかかる垂直抗力や重力は見難くなるので省略してあります。)しかし、力が加わったことが分かっただけで、結局これでは「力が作用した結果何が起こったのか?」は示せませんね。つまり「力が作用した結果何が起こったのか?」を示すためには、「どれくらい」力が加わったのかを示すことが必要なわけです。そこでさっきのお話を思い出してみましょう。 物体に力[N]を加えて動かしたとき、「動かした距離」で評価する方法と「動かした時間」で評価する方法の2つがありました。
図11のように物体に一定の外力(男の子が押す力)[N]を加えて距離[m]だけ移動させたとき、外力は物体に[J]の仕事をしたと定義します。つまり仕事は
[J] | (1) |
と表せます。
もう少しイメージしやすく表現をしておくと、「男の子が物体に仕事[J]を加えたと親方が評価している」という感じです。つまり力[N]を加えたとだけしか伝えられないと評価しにくいですが、どれだけの距離動かしたのかという情報までもらえるとこのように「仕事」として評価できるというわけです。(ここで言う仕事とは当然実世界の仕事とはちょっと違いますよ。)
図11と全く同じ運動でも違う見方で評価することが出来ます。もう皆さんはお分かりですよね。
物体に力[N]を加えて動かしたとき、加えた力を、その力を加えた時間で評価すると、その力は物体に
図12のように物体に一定の外力(男の子が押す力)[N]を時間[s]だけ加え続けたとき、外力は物体に [Ns]の力積を加えたと定義します。
力積 | (2) |
一般的には加える時間をほんの一瞬の[s]として、力積を [Ns]と表したりします。力がほんの一瞬だけ働く…つまり衝撃力を表す値のようなものですね。
ここで仕事と同じようにもう少しイメージしやすく表現をしておくと、「男の子が物体に力積 [Ns]を与えたと親方が評価している」という感じです。つまり力[N]を加えたとだけしか伝えられないと評価しにくいですが、どれだけの時間、力を加えたのかという情報までもらえるとこのように「力積」として評価できるというわけです。
動詞の使い分けがちょっと面倒なんですが、仕事は「する・される・加える・加えられる」が、力積は「加える・与える」といった感じの動詞が私はしっくりくる気がします。しかしこれは人によって様々ですので、自分のイメージに合う動詞を選んでください。
まとめますと、
つまり「力を加えた」と言ってもそれだけじゃその力の効果を計ることができないわけです。ですから、図13のように、その力を加えた距離で「仕事」として評価したり、加えた時間で「力積」として評価したりという2つの評価方法が生まれたわけですね。次に、その「評価」を物理の中でどのように利用するのかを説明します。(力積は力学IIの分野で説明します。)
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