摩擦力とは何でしょう?実生活でも結構耳にする言葉ですよね。しかし、当然物理においては明確な定義とそれによる式が必要です。しっかりと理解しましょう!(実際は摩擦力の原因は接触する両物質の表面分子における分子間力によるもののようですが、ここでは古典的に物質表面の凹凸による説明にしておきます。)
摩擦力と言えば、なにがしかの抵抗力とだけ漠然と認識しているかも知れませんね。では、次の図をご覧下さい。 運動方程式の問題2へ戻る
少年が石を矢印の方向へ磨いています。何故かなんてことはどうでもいいです…(^^;)
さて、彼の石磨きにはどのような摩擦力が働くでしょうか?…まず摩擦力が働く場所ですが、それはもう当然分かりますよね?
そうです。接触点でした。ですから、図2の場所となります。
下向きに磨くわけですから、感覚的に上向きに抵抗があるのは納得してもらえると思います。後々、感覚ではなくしっかりと理解してもらいますが、今は感覚的で結構です。
では、この摩擦力の大きさは何に因って決まるのでしょう?イメージしてみてください!
一つ目は「接触する2物体の材質と表面の具合」に因ります。例えば、「水に濡れた氷の壁」に同じく「水に濡れた氷」を接触させて擦っても、ツルツルでほとんど摩擦力を感じないのに対して、「普通の壁」を「雑巾」で擦るとしっかりと摩擦力を感じるでしょう。
図3:水で濡れた氷同士 |
図4:壁を雑巾でこする |
しかし、「水に濡れた氷の壁」がギザギザしていて、それを擦る側の「氷」も同じくギザギザしていたら、多少の摩擦力は感じそうですね。ですから、材質だけに依存するのではなく、材質とその材質の表面の形状に依存するのです。
さらにもう一つ摩擦力に影響を与えるものがあります。それは何でしょう?
実は「摩擦を生じる物体同士をくっつけるために押し付ける力」です。どんなに互いの材質と表面の状態が起因して摩擦が生じやすい状況にあっても、とても軽〜く接触しているだけだったらさほど摩擦力を感じることなく動けるはずです。しかし、それらを強く押し付けあっている状態で動かそうとすると大変ですよね。
どうしてもわかりやすい図にしようとすると「どちらから見えている力なのか?」というのを無視しなくてはなりませんでした。 図6,7の垂直抗力Nは石から見える力、摩擦力fは少年から見える力です。 少年から見える垂直抗力は本当はそれぞれの図中のNと逆向きです。 |
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図6:強く押し付ける |
図7:力を抜いちゃった… |
この状態、昔経験がありますよね?図6では摩擦を生じている手足・背中と壁を思いっきり押し付けているから摩擦力が大きく働き、下に落ちることはありません。それに対して、力を抜いてしまった図7においては、押し付ける力が弱くなったので、下に落ちてしまいました…。
この面に対して垂直に押し付ける力を「垂直抗力」と言います。つまりこの垂直抗力が大きければ、摩擦力も比例して大きくなるということなのです!
結局、摩擦力は
ということが分かりました。では、これを物理ではどのような式に表すのでしょうか?
摩擦力の場合分けに戻りますか?接触する物質同士の材質とその表面の状態によって決まる定数を(ミュー)としておくと、押し付ける垂直抗力[N]とにより摩擦力[N]は
というように、それぞれの積で表されます。つまり、どんなに材質と接触面がザラザラしていても、押し付ける垂直抗力を0[N]とすると、摩擦力は全く働かないし、逆にどんなに強く押し付けようとも、接触面が限りなくツルツルしている状態だったら()、これまた摩擦力は全く働かないということです。
イメージ出来たでしょうか?
しかし、ここには実は大きな落とし穴が用意されているのです…。
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