実は摩擦力には場合分けが必要になります。しかしそんなに大したことではありません。ちゃんとルールさえ守っていれば、絶対に間違うはずなどないのです。…でも、守らない人が多いから、どうしてもひっかかってしまうんですね…自分が仕掛けた落とし穴に…。そうならないために、しっかりと理解して覚えましょう。
では摩擦力をどのように場合分けするのでしょうか?次の図をご覧下さい。
掃除するときに、寝ているお兄ちゃんが邪魔なようです。妹は起こしても起きないお兄ちゃんの足を持ってズリ動かそうと思っています。さて、このときお兄ちゃんと床との間にどのような摩擦力が発生しているでしょうか? ちょっとモデルを考えてみましょう。
何やら一気に寂しい図になってしまいましたが、先ほどの寝ているお兄ちゃんを妹が引いている様子を表しています。つまりお兄ちゃんが四角い箱(質量[kg])で、妹は力のみの
[N]になっています。皆さんがよく見る物理のモデルそのままです。では、摩擦力を考えるツールを与えましょう。次のように、摩擦力が発生する面に三角形を2つ描いてください。
この三角形がどのような意味を持っているのかは次の図をご覧になっていただければすぐに分かると思います。
実際の問題を解く場合にはこのように再度図示し直している暇はないので、図10のように2つを物体にくっつけて描きますが、小さな内側の三角形は実は上の物体の表面の凹凸を表した物体についている三角形で、大きな外側の三角形は下の物体(今回は地面)の表面の凹凸具合を表した、地面に付いている三角形です。
次に、これをどのように使うかと言いますと…、運動の原因となっている外力に注目するんです。今回、摩擦力が働く運動の原因となっているのは外力[N]ですね。ですから、その
[N]によって動く物体をわずかに動かしたときのことを考えてみるんです。向かって左方向へ力が働いていますから、物体は当然左方向へ動きますね。そうすると図12のようになります。
図12に示すように、物体を動かすことにより、2つの三角形の間で形成されていたV型の溝のうち左側の溝が接触します。実際はこれを頭の中で想像してV型溝の右と左、どちらが接触するかが分かったら図13のように2つの三角形の間の溝に書き込みます。
そうすると、摩擦力が勝手に見えてきます。では考えてみましょう。力はどこに発生するんだったでしょうか?力の発生場所へ飛びますか?当然接触点ですよね。
見える力というのはどのような力だったでしょう。当然受けている力でしたね。そうすると、接触点により働き、物体から見える摩擦力が発生する場所は当然図14の点になりますし、もし必要なら地面から見える摩擦力が発生する場所は図15の点となります。見える力へ飛びますか?
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図14:摩擦力が働く点(視点:物体) |
図15:摩擦力が働く点(視点:地面) |
それをふまえて、物体に働く摩擦力[N]を描いてみると図16のようになります。接触点から垂直に発生するんでしたね。今回は垂直ではなく軸に沿った形に描いています。理由は簡単で、摩擦力とは動かしている方向と平行に(軸方向に)働くからです。あくまで三角形はモデルですから。
今回は関係ないですが、地面に働く摩擦力を考える場合は図17のようになります。
当然物体に働く摩擦力[N]と地面に働く摩擦力
[N]は方向は逆ですが、大きさは同じものとなりますね。なぜならばそれらは作用・反作用の関係にあるからです。
これで摩擦力を考えるツールの勉強は終わりました。では実際にこれを使って摩擦力を考えていきましょう。もう一度兄妹に出てきてもらいます。
今度は摩擦力も描いてあります。さてこの摩擦力がどういう値になるか考えます。
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