F _MASTER'S EYE

力学

v-tグラフから読み取れるもの

では、皆さんは図12からどのようなものが読み取れるでしょうか?

図 12: v-tグラフ
v-tグラフ

もちろん$t$軸の$ t=0$[s]や$ t=t$[s]、さらに$v$軸の$ v=v_0$[m/s]や$ v=v$[m/s]も読み取れるでしょう。しかし、それ以上にこのグラフには有用な情報が隠れています。ではそれを考えていきましょう。



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読み取れるもの(1つ目)

ここで、もう一度数学の「直交座標」に登場してもらいます。

図 13: 数学の軸
数学の軸

今回は直交座標内に直線を引きました。さてこの直線の傾き$ m$はどのように表されるでしょう?

$\displaystyle m = \frac{\Delta y}{\Delta x}$ (1)

ですよね。$ \Delta $は変化量を表します。つまり$ \Delta x $であれば「$ x$の変化量」という意味になります。

図 14: 直線の傾き
直線の傾き

この傾きがどのくらい有用なのかはいつか数学の方で語ることにしまして、では物理における$v-t$グラフの傾きはどのようになるのでしょうか?

図 15: v-tグラフ
v-tグラフ

もちろん軸が$ x-y$ではなく$v-t$ですから、傾きは

$\displaystyle \frac{\Delta v }{\Delta t}$ (2)

となります。これを見て何か思い出すことはありませんか?…速度変化を時間変化で割ったもの…。つまり「1秒間あたりの速度変化」…そうです。加速度ですね。すなわち$v-t$グラフにおける直線の傾きは「加速度」を表すわけです。

$\displaystyle \frac{\Delta v }{\Delta t}=a$ (3)

図 16: v-tグラフの傾きは加速度
v-tグラフの傾きは加速度

せっかくですから、グラフ中にある値を使って、この運動の加速度を求めてみましょう!

$\displaystyle a$ $\displaystyle = \frac{\Delta v }{\Delta t}$    
  $\displaystyle = \frac{v - v_0 }{t - 0}$    
  $\displaystyle = \frac{v- v_0}{t}$ (4)

となりました。この式(5)は後で使いますのでしっかり覚えておいて下さい。

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読み取れるもの(その2)

$v-t$グラフの傾きがそのときの運動の加速度を表すことがわかりました。しかし$v-t$グラフからわかることはそれだけではありません。では他にどのようなことが読み取れるのでしょうか?次の運動をご覧下さい。

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等速度運動の場合

図 17: 等速度運動
等速度運動

普通の速度$ v_0$[m/s]での等速度運動です。これを$v-t$グラフで表すと

図 18: 等速度運動のv-tグラフ
等速度運動のv-tグラフ

となります。…ここで小学生のときからずっとやって来てますよね。等速$ v_0$[m/s]で$t$[s]間進んだときの距離はどれだけになるでしょう?

$\displaystyle x$ $\displaystyle = v\times t$ (5)へ戻る
[m] $\displaystyle =$   [m/s]×[ s ]    

おそらく意味もわからず「はじき」だの「みはじ」だの言って覚えている方も多いでしょうが、これからはちゃんと単位で読み取ってくださいね。速度というのは「1秒間にどれだけの距離進むかを表す値」というのが定義ですから、$t$秒間で進んだ距離が知りたいのならば、その$v$$t$をかければいいだけの話です。そうすると$t$秒間で進んだ距離が分かります。式(5)の単位表記を見ていただけば、一目瞭然ですね。

ではその$t$秒間で進んだ距離は、図18においてどこに現れてくるのでしょう?進んだ距離$ x$は式(5)のように表されていますから…

図 19: v-tグラフにおける面積へ戻る
v-tグラフにおける面積

19のように表されますよね。 $ v_0\times t$で表される距離$ x$$v-t$グラフにおいて面積で表されます。これは、実際には微小時間$ \Delta t$秒間に進んだ距離 $ \Delta t\times v_0$を時間0[s]から$t$[s]まで加え合わせたものになります。

図 20: 微小面積の和
微小面積の和

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等加速度運動の場合

では、今回の運動の場合を考えてみましょう。もう一度今回の等加速度運動の図を出します。

図 21: 等加速度運動
等加速度運動

前は兄妹のところが車でしたちょっと図を変えてしまいました。こっちの方が、穏やかな感じでやわらかいから物理が楽しくなぁ…とか思ってではなく、時の神が少々浮いている間があったので、全体をそちらに合わせたというのが本音ですが…。この図の構想から作図までに6時間ほどかかってしまい…そのせいで自宅でのノルマに影響が…

さて、妹を後ろから押して加速してあげるお兄ちゃんの図ですが、もちろん彼には等加速度運動をやってもらいます。ちょっと辛いですけどね(^^;)

21の運動の$v-t$グラフを再度、図22に示します。

図 22: v-tグラフ
v-tグラフ

19と図20で学んだように、$v-t$グラフにおいて微小時間での $ \Delta t \times v$の和は進んだ距離になります。ですから

図 23: v-tグラフにおける面積へ戻る
v-tグラフにおける面積

これはすぐに解るでしょうか?さっきの微小時間に進む距離の和トータルで進んだ距離の和というのを思い出してみましょう。

図 24: 微小時間に進む距離の和
微小時間に進む距離の和

24のように、微小時間$ \Delta t$の間に進んだそれぞれの距離 $ \Delta t \times v'$[m]($ v'$はその時々の速度)の和を$ t=0$[s]から$ t=t$[s]までとるとその間に進んだ距離を表します。ここで図24においてちょっと直線からはみ出した領域が気になる人がいるかもしれませんが、それは$ \Delta t$を限りなく小さくしたら全く問題なくなりますね。だって、はみ出す部分は近似的になくなりますから。だから結果図23の領域になることは理解できますね。

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式で求める

ではその$ t=0$[s]から$ t=t$[s]までの間に進んだ距離を求めてみましょう。

求める際は以下のように面積を二分します。

図 25: 二分された面積へ戻る
二分された面積

の領域は等速で進んでいたときの距離$ x_1$[m]です。これは前に図19でも示しましたね。アレと同じです。そしての領域は加速をしていたせいで余計に進んでしまった距離$ x_2$[m]です。この領域が図19に加えられるのです。ではその二つの和$ x$[m]を出してみましょう。

$\displaystyle x_1$ $\displaystyle = v_0 \times t$ (6)
$\displaystyle x_2$ $\displaystyle = \frac{t \times (v - v_0)}{2}$ (7)
$\displaystyle x$ $\displaystyle = x_1 + x_2 = v_0 \times t + \frac{t \times (v - v_0)}{2}$ (8)

ここでもう一度式(4)を思い出してください。 $ a = (v - v_0)/t$でしたから、式(8)中の$ v-v_0$ $ v- v_0= at$と書けますね。ですから式(8)は

$\displaystyle x$ $\displaystyle = x_1 + x_2 = v_0 \times t + \frac{t \times at}{2}$    
  $\displaystyle =v_0 t + \frac{1}{2}at^2$ (9)

となります。ちなみに、式(5)は変形して$v$を求める式にすると

$\displaystyle v = v_0 + at$ (10)

と書けます。この2つ何やら見覚えのある方も多いかと思います。…というか見覚えがないとダメです。力学の基本3公式(こう言ってるのって私だけ?)のうちの2つですね。では3つ目はどうするかと言いますと…式(9)と(10)を連立させて$t$を消去するんです。式(10)より $ t=(v-v_0)/a$ですから

$\displaystyle x$ $\displaystyle =v_0 t + \frac{1}{2}at^2$    
  $\displaystyle = v_0\cdot \frac{(v-v_0)}{a} + \frac{1}{2}\cdot a\cdot \frac{(v-v_0)^2}{a^2}$    
  $\displaystyle = \frac{v_0(v-v_0)}{a} + \frac{(v - v_0)^2}{2a}$    
  $\displaystyle = \frac{(v - v_0)(2v_0 + v - v_0)}{2a}$ (11)
  $\displaystyle = \frac{(v - v_0)(v + v_0)}{2a}$    
  $\displaystyle = \frac{v^2 - v_0^2}{2a}$ (12)

式(11)では、分子にそれぞれ$ (v -v_0)$があるからそれを共通項としてくくっています。計算が楽になりますね。ということで式(12)になります。ではこの式(12)の分母をはらってみましょう。

$\displaystyle v^2 - v_0^2 = 2ax$ (13)

という式が出てきます。これは結局式(9)と(10)から$t$を消去した式なので、$t$がわからない状態で$v$$ v_0$$ a$$ x$のどれか3つが解っているときに、$t$を求めなくても使える式として、わざわざここで出していますが、結局「力学的エネルギー保存則」を習うとそれと同じことなので、わざわざ覚えるのもなぁ…と思います。

物理を公式でどうにかしようというのは無理なお話です。問題を解くときには現象を把握し、それを自分で式にしなくてはなりません。だから難しいと言われるのでしょうが、逆にどうしてその公式が出てきたのかというのを覚えておくと、それを使う理由もわかるので、すぐに問題が解けるようになります。一緒に頑張っていきましょうね!flashコンテンツによるv-tグラフシミュレーションのページがあります。そちらへ飛びますか?

右にflashで作ったv-tグラフシミュレーションへのリンクがあります。そちらから飛ぶと、今学んだv-tグラフを自分で作って直にv-tグラフと実際の動きとの感覚的マッチングを取ることができます。是非ご利用ください。

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まとめ(力学の基本3公式)

ということで現時点ではとりあえず式(13)も大事だということにしておいて

$\displaystyle v = v_0 + at$    
$\displaystyle x = v_0t + \frac{1}{2}at^2$    
$\displaystyle v^2 - v_0^2 = 2ax$    

は覚えておいてください。あぁっと、意味の確認をするのを忘れていました。 $ v=v_0 + at$は、加速度さえなければ速度$v$$ v_0$のままであったことを意味します。加速度があると、加速度とは「1秒間にどれだけ速度が変化するか」という値ですから、$t$秒間で変化する量は当然$ at$[m/s]になります。ですから結局加速度$ a$があると、 $ v=v_0 + at$となります。

さらに、 $ x = v_0t + at^2/2$ですが、これは図25でお伝えしたので大丈夫でしょう。加速度がなかったら$ x= v_0t$になりますが、加速度があるせいで余計な三角形の部分の面積だけ進んでしまうので、それを加えて $ x = v_0t + at^2/2$となります。

3つ目の式は先ほども言いましたように、ただ上2式から$t$を消去しただけです。これらの使い方は後々問題演習のページを作るかも…知れません。まぁ、皆さんの要求次第です。

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Copyright (C) F_Master All rights reserved. 更新 Monday, 21.05.2012 10:26 pm

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